忠犬ハツ恋
「でもまさか美咲が学祭でメイドカフェを提案するとは思わなかったよね〜。」

茜ちゃんが私のエプロンのリボンを整えながら言う。

「それは茜ちゃんがノープランの私に意見を求めるからでしょ?
私もまさか受験を控えたこの時期の学祭でメイドカフェが採用されるとは思ってなかったよ!」

最終学年になり茜ちゃんは学級委員になった。

学祭の出し物を決める話し合いがなかなか進まない事にしびれを切らした茜ちゃんは私に「何か案を出せ」と無茶振りをした。
その時の私の頭の中にはメイドカフェしか浮かんで来なかった。

「まあね、そういうとこウチの学校って緩くていいと思うわ。」

茜ちゃんは自分のメイド姿を自撮りしながら笑った。



茜ちゃんが言うように今日は出会いが山のようにあった。
来る客、来る客、ほとんど男性でその目当てはメイド姿の私達である。

せっかくシャロンからコーヒーメーカーを借りて学祭にしてはかなり質のいいコーヒーを出しているつもりなのに、コーヒーについて感想を言ってくれる人なんて1人も居ない。

皆、好みの女の子の連絡先を手に入れるので必死でクラスの女性陣も満更でもない風に接客をしている。

私は彼女達に接客を任せひたすら美味しいコーヒーを淹れる事に徹した。
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