忠犬ハツ恋
「おい!白石!!まだ着替え終わんね〜の?
俺等、受付なんだけど。」

玄関から檜山君の声が聞こえた。

私は着替えを済ませたものの脱衣所から出れずにいた。
……恥ずかし過ぎて…。

「檜山君、私、ちょっと頭痛と吐き気と熱が…。
帰りたいなぁ〜なんて…。」

私の声を聞き付けて檜山君が脱衣所の扉の前まで来る気配を感じる。

「人手が足らないっつってんだろ?
仮病はよそでやれ。
早く出て来いよ!着替え済んでんだろ?
出てこないなら今から扉、蹴破るぞ!
当然その修理代はお前持ちだからな。」

檜山君がそう言うと本当に蹴破りそうな気がする。

「ちょっ!!ちょっと待って!!分かったから。
……分かったから、
あの……笑わないって約束して。」

「笑わねぇよ。早く出て来い。」

檜山君の一言に私は脱衣所の鍵を開け、おずおずと扉を開けた。
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