忠犬ハツ恋
腹ごしらえが済むと真面目に勉強に取り掛かった。

さっきまでのほんわかムードは何処へやら?
檜山君はただ黙々と教科書を読んでいる。
お客さんが入って来てもそんな事まるで気にならない様子。
その集中力が学年トップの所以なんだろうか?

私は前回の期末テストで分からなかったところを荒木先生に聞いていた。

「ハチ公ちゃんは理解も飲み込みも早いね。
君、東野に来ればすぐ成績上がるよ。
彼氏に内緒で来ちゃえば?
進路はどうするの?もう大学決めてる?」

「いえ……。」

親の手伝いをするつもりなら理系に行かなければならないだろう。
でも私の中の第一志望はやっぱりお嫁さんだった。
それでなければ大ちゃんに毎日栄養のあるご飯を作ってあげるために調理師とか栄養士とかをぼんやり思い描いていた。

教科書の読書に耽っていた檜山君が突然話しに割り込んで来る。

「ハチ公も入れんなら俺行ってもいいよ、夏期講習。」

「夏期講習は別に成績優秀である必要は無いからハチ公ちゃんの意志があれば入れるよ。
後、親の許可。学費要るからね。
とりあえずさ体験講座に来てみたら?
それならお金かからないし。」

そう問われて返答に困った。

「……少し…考えてみます。」

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