忠犬ハツ恋

「でもさ、佐々木さんが泣きついてた相手。
誰だと思う？
筧戸先生だったんだ。」

その名を聞いて心臓が止まるかと思った。

筧戸……大輔。
それは大ちゃんと同じ苗字で。
カケイドなんて珍しい苗字、同姓がそこら中に転がってるとは思えなかった。

考え込む私に荒木先生が気が付く。

「ゴメンね、ハチ公ちゃん。
一色先生とか筧戸先生とか知らないから話がよく見えないよね？」

もはや荒木先生の気遣いすら私には届かなかった。

私の頭の中は大ちゃんの胸で泣く佐々木詩織さんに支配されていて、事実を大ちゃんに確かめたいと言う気持ちと、真実を知るのが怖いと言う気持ちの間で混乱していた。