忠犬ハツ恋

「東野に新しく入った事務員さんってそんなに魅力的なんですか？」

"魅力的な事務員なんていないよ〜"そう笑い飛ばしてくれるんじゃ無いかと思っていた。
でも一色先生の反応は私の不安を取り除くどころかむしろ増大させた。

「その話……誰から聞いた？」

一色先生は笑い飛ばすどころか、真剣な表情で私に問い返す。

荒木先生の言っていた事は本当なんだ。
大ちゃんの胸で泣く佐々木詩織さんという人物の存在……。

今まで大ちゃんに浮気だとかその類の女性の影が無かっただけに、今のこの状況が怖かった。

「帰ります！さようなら一色先生。」

「ちょっと待った！！美咲ちゃん！」

一色先生が止めるのも聞かずに私はその場から逃げ出した。