忠犬ハツ恋
映画館を出ると外は土砂降りだった。
天気予報は雨だったろうか?

傘なんて持って来ていない。
でも雨宿りしている時間は無かった。
濡れる事を覚悟して駅に向かって一歩踏み出そうとした時、後ろから声を掛けられた。

「白石?」

そこにはシャロンの家業手伝いモードの檜山君が傘を片手に立っていた。

………今、1番会いたくない人だ。

「お前こんな時間にこんなとこで何やってんの?」

私は今の心の不安を悟られたくなくて、檜山君に背を向けて大雨の中を飛び出した。

「あ!おい!!白石!!
そっちはダメだ!!」

檜山君の止めるのも聞かず雨の中を走る。

すると突然腕を引かれた。
見ると、雨合羽を着た男性。腕には腕章をしている。

しまった!!補導だ!!!
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