空色の瞳にキスを。【番外編】
「行かせないわ。」
素早くルオーの一歩先へと移動して、少女は男を睨み上げた。言葉だけが場違いに鈍(のろ)く、置いていかれる。瞬間移動のように見える高速移動は改造人間の十八番。驚く人間には罪はないが、二人を傍観するルグィンにはルオーが酷く馬鹿に見えた。
短剣をちらつかせ間合いを詰める彼女は、大男に並ぶと酷く小さい。その口から零れるのは身の丈に似合わない背伸びした台詞達。
「大丈夫、殺さないわよ。折角ルグィンが生かしておいてくれたんだもの。ありがたく王女崇拝団体の撲滅に使わせていただくわ。」
スズランはどこか高貴に笑うが、薄暗い月明かりが狂気を映す。行き詰まった男はスズランに拘束されても、まだ喋る。
「国民想いで優しかったカイ国王の娘のナナセ様が、お父上を殺された筈がないんだ!王女様がこの国を引き継がれるまで、俺達は諦めない!俺ひとり死んでも、まだ仲間は山ほどいる!今の狂った王を殺すまで、俺達は!お前ら化け物とも、糞みたいな国軍とも、戦ってやる!」
男の言葉は崇拝団体からの宣戦布告のようで、獅子の少女の瞳が妖しく揺れた。
「そんな決意、すぐ崩してあげるわ。組織の巣窟だって、あなたが守ろうとしているもの全部、吐かせてあげる。」
月明かりの中で唇が動くのを、視界の中で男は見つめる。
「まぁでも、この国がおかしいのは認めてあげる。」
ゆらりと笑う少女の灰金の瞳の奥は鋭く、笑っていなかった。ビル風が巻き上げたくすんだ髪は蒼白い。風を気にせずまっすぐ大人を見詰めるのは、貴族の誇りを失わない十四の少女の姿だった。巻き上がった風の中で、凛とした声は各々の鼓膜を叩く。
「私たちみたいな化け物まで作り始めてしまうなんてもう終わりよ。戦争で私たちの存在は明らかになったわ。一度負ければそこで終わりね。今度こそ、他国の領地になるでしょうね。」
国の終わりを、そっと空を見上げて唄った少女は、冷めた瞳でルオーを見つめて。
「そうね例えば、今のルイの王と方策が似ている、フェルノールとか攻めてくるかも知れないわよ?
私だったらあの国がルイ初代国王を暗殺したあの時に、この国を占領するのに。何故今までこの国は平和なのかしらね。」
この国は他国に乗っ取られて、もっと圧政を敷かれたって普通なのに。そっと呟く声はスズランのもの。
口許に手を添えて、考えるような素振りをして少女はゆらりと狩人に笑いかける。
素早くルオーの一歩先へと移動して、少女は男を睨み上げた。言葉だけが場違いに鈍(のろ)く、置いていかれる。瞬間移動のように見える高速移動は改造人間の十八番。驚く人間には罪はないが、二人を傍観するルグィンにはルオーが酷く馬鹿に見えた。
短剣をちらつかせ間合いを詰める彼女は、大男に並ぶと酷く小さい。その口から零れるのは身の丈に似合わない背伸びした台詞達。
「大丈夫、殺さないわよ。折角ルグィンが生かしておいてくれたんだもの。ありがたく王女崇拝団体の撲滅に使わせていただくわ。」
スズランはどこか高貴に笑うが、薄暗い月明かりが狂気を映す。行き詰まった男はスズランに拘束されても、まだ喋る。
「国民想いで優しかったカイ国王の娘のナナセ様が、お父上を殺された筈がないんだ!王女様がこの国を引き継がれるまで、俺達は諦めない!俺ひとり死んでも、まだ仲間は山ほどいる!今の狂った王を殺すまで、俺達は!お前ら化け物とも、糞みたいな国軍とも、戦ってやる!」
男の言葉は崇拝団体からの宣戦布告のようで、獅子の少女の瞳が妖しく揺れた。
「そんな決意、すぐ崩してあげるわ。組織の巣窟だって、あなたが守ろうとしているもの全部、吐かせてあげる。」
月明かりの中で唇が動くのを、視界の中で男は見つめる。
「まぁでも、この国がおかしいのは認めてあげる。」
ゆらりと笑う少女の灰金の瞳の奥は鋭く、笑っていなかった。ビル風が巻き上げたくすんだ髪は蒼白い。風を気にせずまっすぐ大人を見詰めるのは、貴族の誇りを失わない十四の少女の姿だった。巻き上がった風の中で、凛とした声は各々の鼓膜を叩く。
「私たちみたいな化け物まで作り始めてしまうなんてもう終わりよ。戦争で私たちの存在は明らかになったわ。一度負ければそこで終わりね。今度こそ、他国の領地になるでしょうね。」
国の終わりを、そっと空を見上げて唄った少女は、冷めた瞳でルオーを見つめて。
「そうね例えば、今のルイの王と方策が似ている、フェルノールとか攻めてくるかも知れないわよ?
私だったらあの国がルイ初代国王を暗殺したあの時に、この国を占領するのに。何故今までこの国は平和なのかしらね。」
この国は他国に乗っ取られて、もっと圧政を敷かれたって普通なのに。そっと呟く声はスズランのもの。
口許に手を添えて、考えるような素振りをして少女はゆらりと狩人に笑いかける。