夢の結婚 ……
「相良 由美子… ふーん…彼女?」
「……」
「ま、いいわ!! お礼もあるしね。
調べといてあげる。 分かったら連絡する
ねっ。」
真人は連絡先を渡し、その場を後にし
た。
数日後、真紀から由美子について詳しく
聞きたいと連絡があった。
真人は待ち合わせ場所である喫茶店へと
向かった。
「…遅くなった。」
「もぅっ!! おそーい!! ここ奢りだから
ねっ!」
真紀はニコニコしながら追加でパフェを
注文した。
「真人は!?」
「いゃ…俺は…」
「あ、じゃぁアイスコーヒーとパフェ、
もう1つ!!」
真紀は真人の事などお構い無しといった
様子で真人の分まで注文した。
「……で、何が聞きたい?」
真人はそんなことよりもといった様子で
真紀に尋ねた。
「まぁ、まぁ、そんな急がなくても♪
今日はせっかくのデートなんだしさっ♪」
……真紀は運ばれてきたパフェを口に運
びながら、何やら楽しそうだ。
「……はぁ」
真人はどうもこの真紀と言う女と話して
いると、調子がおかしくなるなと思いなが
らため息をつくと、運ばれてきたコーヒー
に口をつけるのだった。
その後も何度か真紀とはこうして情報交
換をしていたが、一向に相良 由美子の情報
を聞くことは出来なかった。
3ヶ月もたった頃、真人は今日こそ問い
詰めようと、真紀のペースに飲まれないよ
う気を張りながらいつもの待ち合わせ場所
に向かった。
「おっす、し…、真人♪ 今日さぁ、関内
の新しく出来たあそこ!! …なんてったっ
けー…」
真紀はいつも通り真人をどこかへ連れて
いこう1人ではしゃいでいたが、真人はそ
れを遮るように、冷たく言いはなった。
「…いい加減にしろ。」
「えっ…?! し……、まな…と?」
「これ以上、あんたには付き合えない。
見つからないならそれでいい。
あんたを責めるつもりもない。
ただ、もう会うこともない…」
「……」
真紀は一瞬びっくりした顔をしたが、俯
いてそのまま黙っている。
「……手間をかけて悪かった、
…じゃあな。」
真人はそう告げると、席を立とうと
した。
「…待って!」
「……なんだ。」
「情報は…あるわ。」
「?…なんだって……」
「相良 由美子、情報は…ある。」
「ならっ、今までどうし…「ただ!
今日だけは付き合って!
…もう…最後にするから…」
真紀はそう言うと、寂しげに笑った。
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「どぉ…!? 最後のは安心したって、
顔に書いてあるけど♪ ふふ…。」
相良 由美子は西区に住んでいるという
事だ。
他にも現在の職場や、仕事内容。
聞いてもいないが、現在付き合っている
男がいないことまで…
「別に…、それよりなんで黙ってたん
だ。」
「だって、言ったら…
行っちゃうでしょ!? …彼女のとこ。」
夕陽を背に真紀は寂しげにそう呟いた。
「別に……俺はそんな関係じゃ……
「 いいのっ!! もう…十分楽しかったか
ら。」
「真紀…」
「…ぷっ! 何て顔してんの!?
もぅ…そんな顔じゃ、彼女に振り向いて
貰えないよ…」
「っだから、そんな関係じゃ…
「あ、あとその喋り方!!
ヤクザだか?なんだか知らないけど、
カッコつけちゃってダサいよー、それ。」
と、真紀はケラケラ笑いながらいつもの
マシンガントークを始める。
「……」
「直した方がいいよ、それ…。」
「ああ…。」
「ああ。じゃない。
わかりましたょ。でしょ!?」
「…わかりましたよ…」 「もう一回!!」
「わぁかりましたよっ!!」
真紀は「よしっ!!」と頷くと、背伸びをし
ながら真人の頭をヨシヨシと言いながら撫
でて…
真人に唇を寄せた。
「……っ?!」
突然の事に真人の頭は真っ白になった
が、真紀はいつものようにケラケラと笑い
ながら、真人の耳元で囁いた。
「バイバイ。…… 真二」
最後の方はよく聞こえなかったが、そう
言い残すと真紀は、足早に去っていった。
「…喋り方ね…」
「…俺だって別に…最初からこんなん
じゃ…」
1人呟くように言って、真人は顔を上げ
た。
赤レンガ倉庫が夕陽に照らされる。
その光が乱反射し、目が眩むようだ。
…真紀。
昔似たような子に会った気がする。
真人はそんな事を1人考え、立ち尽くし
ていた。