*甘いモノ*
「え?........あ、」
香菜は笑いながら振り返るとそのまま硬直してしまった。
「は?ちょっと香菜..........え、亜樹?」
私もつられて後ろに振り返ると、目の前にいたのはD組の君.....
夏野亜樹だった。
「......あ、ああ...亜樹くん!?梓の幼馴染みの!!?」
「そーだよ、梓の幼馴染みっ!..んでその梓に用があったんだけど......」
亜樹は持ち前のキュートフェイスで香菜を悩殺して私の方へ視線を向けた。
「..なに?また家の家事しとけとかそんなの?」
どうせかわんないんだろうな、って思いながら一応亜樹に耳を貸してはみる。
「うん、梓のおばさんから"深夜まで帰らないからそれまでの家事宜しくね"だってさ。」
亜樹から伝えられた伝言は昨日言われたものと一言一句違わない。
「そっか、わざわざパシリちゃんお疲れさま~」
そのまま私は皮肉を含めたお礼を言って屋上の扉へ向かった。
なんかちょっと自分のテンションが下がったって感じ、だってアタシ亜樹の事が嫌いって訳じゃないんだけど苦手なんだよね。
「.....え、あ.....ってちょっと梓!どこいくのよ~」
ようやく動き始めた香菜は私が帰ろうとしてるのを見て慌てて走ってきた。
「帰るのとお手洗いっ、ということで..じゃーね、亜樹!」
「.....おー、またな」
......バタン。
「やっぱ梓、面白いわ。」
一人取り残された亜樹は屋上のフェンスに手を引っ掻けてそう呟いた。