男の愛した女
『あなたがこれを読む頃には私は処刑されていることだと思います
きっと係りの方には読まれても、両親は読まずに渡してくれると思いますので、あなたにだけは、と思い筆をとることにいたしました
私、縁談のあとにその方との婚約が決まっておりました
両親の決めたこと、私に逆らえるはずがありません
でも、私の心にはあなたがおりましたので、他の方との結婚などできるはずもなく、そろそろ自害する心つもりでおりました
放火する前に、あなたの気持ちがわかったこと本当に嬉しゅうございました。
私の人生はそれだけで満ち足りた思いとなりました
あなたを愛せたこと、心よりよかったと思っております
どうか、これからのあなたの人生に幸多からんことを…
そして、私のことはバカな女だと忘れてくださいまし』