ストーリーズ·ポーター
左右に揺れながら、本が動く。
そして徐々に、少女との間を詰めていく。
そして、襲い掛かろうとした瞬間――
「こっちには、面白い物はないみたい」
本に背を向けていた少女が、振り返る。と同時に動き出した本は頁を閉じ、その場で停止した。
「あれ? この本って……」
先程片付けた本が自身の側にあったことに、少女は疑問に思う。
しかし考えても回答が出ないので、気のせいだと片付けて再びもとの位置に戻す。
ふと、視界の中に興味が惹く物が飛び込んできた。
「お人形だ、可愛い」
新たに興味を惹く物を発見した少女は、人形が置かれている部屋の隅に向かう。
一方、取り残された意思を持つ本は頁を開くと、器用に頁を羽ばたかせ浮かび上がる。
そしてクルリと後方に回転すると、微かに開いた扉の隙間から隣の部屋に逃げるように立ち去ってしまった。
「操り人形か」
椅子の上に置かれている人形が操り人形と分かった途端、急に興味が薄れてしまう。
普通の人形だったら購入したいと思っていたが、操り人形となると普通の人形遊びはできない。
それに動かしてみようとしても、糸が途中から切れているので動かすことができなかった。
その時、手も触れていないのに人形が横に倒れる。
いきなりのことに少女はか細い悲鳴を上げ、人形を見詰める。
すると閉じていると思われた人形の目が開き、少女に視線を向けた。
突然のことに、少女の身体は石のように固まってしまう。
逃げなくては――そう思うも、身体が動かない。
その時人形が関節を軋ませながら立ち上がると、奇妙な声でケラケラと笑い出す。
その笑い声が、更に恐怖を煽る。
恐怖に引き攣った少女のその表情が可笑しいのか、再び笑い出す。
「アソンデ。アソンデヨ」
ぎこちない足取りで、一歩一歩と少女がいる方向に向かって歩いて来る。
感情のない顔では何を考えているのかわからないが、人形が発している雰囲気で人形の言葉に返事を返してはいけないと悟る。
「ナンデ、コタエテクレナイノ?」
ぎこちない動作で、ギギギっと軋む音を鳴らしながら首を傾ける。
次の瞬間、何も答えてくれないことに少女に対し腹を立てたのか、少女に襲い掛かろうと髪を振り乱しながら飛び掛ってくる。
刹那、少女の横を黒い何かが通り過ぎ、人形を後方へ跳ね飛ばしてしまう。