kiss
いつまでもこうしている訳にはいかないから、トイレを出た。
すると、出てすぐ。
扉の前に優実がいた。
「ゆぅ?」
名前を呼んで、僕の右手首の鈴を確かめてから微笑んだ。
あぁ…
なんでお前は昔からそうなんだ。
「ぅぐっ……っく…」
ズルイ。
僕だけだと思っていた。
優実の隣は、僕だけの場所だった。
他の誰でもない、僕だけの、特別な…
「ゆぅ…?……泣かないで…」
僕の顔を隠すように、優実の左手が僕の顔の横に触れる。
何も音をたてずに、僕たちの唇が重なった。
少し背伸びをして、僕に唇をつけてきた。
優実の香りが今までで一番近くなった瞬間。
僕は優実を抱き締めて夢中でキスをした。
「ゆぅ…」
優実の左手に付けられたリングが光る。
僕にはもう、君に触れていい場所なんて
ない。