イケメン差し上げます



「ごめん」


ドアの向こうで聞こえる声。



「大丈夫だから」


慧也は何にも悪くない。



洗面所で口をすすぎ、部屋へと戻る。



「ごめん、お前が風邪引いて看病しようと思っても上手くいかない」


何だか少し、自信のない声。




「大切にしたいって思っても、どうすればいいのか、わかんねぇ」




そう言って、あたしを静かに抱きしめる。




ふんわり香る、シトラス。

慧也に包まれると、こんなにも安心する。




「ぎゅってして」

「もう、してるんだけど」

「もっと」




と言って気がつく。




「……やっぱ、今のナシ」




風邪がうつるじゃん。


何でもっと早く気づかないの。


あたしの、馬鹿────!!




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