イケメン差し上げます
ピンポ──ン
とインターフォンを鳴らしてみる。
あたしの荷物を外に投げる人だ。
期待はしてないけど、この部屋を返してもらえないか
頼んでみることにする。
「またあんたか、何か用?」
インターフォンのところから漏れてくる声は明らかに不機嫌だった。
「あたしにこの部屋を返してください」
「無理」
悩むとか、こんなあたしを哀れむとか、そういう感情は彼には無いらしい。
ものの二秒くらいで断られた。
「あたし、騙されたんです」
「知るか」
「だから今日だけでも……」
「騙される方が悪い、帰れ」
「帰る場所が無いんです」
「じゃ、死ねば」
そう言い放つとインターフォンが切れた。
……言葉が出ない。