鴉の濡れ羽色
特に話したこともなかったし、恋愛感情も生まれず、幼なじみという特別な関係なんてことも意識しないまま、私達は中学校を卒業した。
それが彼について覚えていることの一つで、もう一つはその後に起こったことだ。
その日は、中学校を卒業してからたった3日しか経ってなく、卒業生にしか味わえない一足お先の春休みを満喫していた時だった。
友達と遊びに出掛けていた私は、帰って来るなり家の中の嫌な雰囲気を感じ取った。
リビングには、仕事のはずの父がいつもと違う真っ黒の背広に身を包み、母は正座を崩したように座って喪服に更に黒いシミを落としていた。