鴉の濡れ羽色

もう暗くなるというのに電気も付けず、父は立ち尽くしたまま、母は止めること知らないかのように泣いていた。
重く開いた父の口から聞いたのは、その日の前々日、つまり卒業式の日に、隣の男の子のお母さんが亡くなったということだった。

あの日の彼は、いつもの柔らかい笑顔を惜しみなく振りまき、学ランのボタンを一つも残すことなく消していて、大半は後輩ではなくて同級生が貰っているのを見て、密かに彼がモテていたことを悟った。

沢山の写真に写り、最後の中学校生を味わって帰った彼は、その日の夜にドン底に落とされたのだろうか。
祝福されるべき日に、彼は悲しみを噛み締めることになった。

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