鴉の濡れ羽色
特に話したこともなかったし、恋愛感情なんてものは、梶やんと付き合い始めてからも生まれることはなかった。
幼なじみという特別な関係なんてことも意識しないまま、俺はあの日を迎えた。
詳しいことは言わないけれど、俺はその日を境に父方の祖父の家へと引っ越し、俺は彼女にとって9年以上のお隣さんではなくなった。
あのまま、何事もなく過ごしていたら、同じ高校に入学していたことを知ったのは父親からだった。
まぁ、なんやかんやあった俺の過去の話を、今ここで話した理由は、俺の目の前に今ちょうど琴海 遥がいるからだ。
「こんにちは...」
相変わらずの冷めた目が、なんだか俺を落ち着かなくさせる。