蝶々、ひらり。
*
それから二ヶ月は頻繁に電話のやり取りがあったが、徐々に遠のき、そのうちどちらからともなく連絡は途絶えた。
「東京はせわしないの」
それが、彼女の言葉の中で一番印象に残った言葉。
「大輔も風邪ひかないでね」
それが、彼女とかわした最後の言葉だった。
彼女との音信不通に悩まされていた俺は、その年の教員採用試験も不合格。
その後お盆や正月もあったし、彼女が帰ってきていたという話も人づてには聞いたが、俺に連絡はなかった。
電話をかけようか悩んで、けれどもやっぱり出来なかったのは、
もしかしたら有紀が俺と付き合ったのは一種の復讐だったのかも知れない、なんて思ったからだ。
彼女が大切になればなるほど、別れが辛くなる。
この「別れ」が有紀の精一杯の復讐だったのではないかと思えた。
俺が掴んだあの一年半の有紀との日々は、無理矢理にもぎ取った夢の果実だったのだろう。
そんな風に自分を納得させてからは、俺は彼女を忘れようとした。
色々な出会いの場に訪れ、友人からの紹介もうけ、一年後にようやく一人の女の子と付き合うことになる。
けれども、何をしていても彼女と有紀と比べる自分に気づいて、半年ほどしてすぐに別れた。
仕方なく今は仕事に打ち込む時期なのだと自分に言い聞かせ、がむしゃらに仕事に打ち込んだ。
そして、卒業してから三年目の今年。
俺は念願の採用試験に合格し、今年の春から新任教師として勤めている。
坂上は俺たちの母校に転任したと、同僚の教師から聞かされた。
もう全てが終わったことなんだと思っていた。
――――この葉書がくるまでは。
それから二ヶ月は頻繁に電話のやり取りがあったが、徐々に遠のき、そのうちどちらからともなく連絡は途絶えた。
「東京はせわしないの」
それが、彼女の言葉の中で一番印象に残った言葉。
「大輔も風邪ひかないでね」
それが、彼女とかわした最後の言葉だった。
彼女との音信不通に悩まされていた俺は、その年の教員採用試験も不合格。
その後お盆や正月もあったし、彼女が帰ってきていたという話も人づてには聞いたが、俺に連絡はなかった。
電話をかけようか悩んで、けれどもやっぱり出来なかったのは、
もしかしたら有紀が俺と付き合ったのは一種の復讐だったのかも知れない、なんて思ったからだ。
彼女が大切になればなるほど、別れが辛くなる。
この「別れ」が有紀の精一杯の復讐だったのではないかと思えた。
俺が掴んだあの一年半の有紀との日々は、無理矢理にもぎ取った夢の果実だったのだろう。
そんな風に自分を納得させてからは、俺は彼女を忘れようとした。
色々な出会いの場に訪れ、友人からの紹介もうけ、一年後にようやく一人の女の子と付き合うことになる。
けれども、何をしていても彼女と有紀と比べる自分に気づいて、半年ほどしてすぐに別れた。
仕方なく今は仕事に打ち込む時期なのだと自分に言い聞かせ、がむしゃらに仕事に打ち込んだ。
そして、卒業してから三年目の今年。
俺は念願の採用試験に合格し、今年の春から新任教師として勤めている。
坂上は俺たちの母校に転任したと、同僚の教師から聞かされた。
もう全てが終わったことなんだと思っていた。
――――この葉書がくるまでは。