蝶々、ひらり。
何日も考えて思い付いたのは、彼女は過去と決別したいのではないかということ。
三年は長い。
有紀が新しい恋をするには十分な時間だ。
誰かと結婚する前に過去を清算したいとか、
そう言う事を考えているんじゃないだろうか。
だとしたら会いたくない。
若気の至りでしてしまったあの行為は、今も思い出すと罪悪感に駆られる。
けれど今更責められるには時が経ちすぎてるような気もして、俺も上手く謝罪の言葉を言えるかわからない。
その一方で、俺は会うための口実も探していた。
あの別れの日に、有紀が俺の涙を拭いてくれたハンカチ。
ずっと俺のタンスの中で眠っていたこれを返すために来た。
そう言えば、会いに行ったとしてもおかしくはないかも知れない。
ハンカチを見つけ出してそんな考えに喜びさえ感じた時、思わず苦笑が漏れた。
俺は有紀に会いたいんだ。
何度も読み返した葉書をもう一度眺めるた。
癖のある字。
彼女の名前。
一緒に居た時間をなぞるように思い出して、泣きたいほど心が軋む。
もう変わってしまったのかも知れない。
あの頃の有紀なんていないのかも知れない。
でも会いたい。
ようやく勇気が俺を奮い立たせた。