蝶々、ひらり。
「あんまり長くは待たないぞ。すぐ攫いに行くから準備しとけ」
アナウンスが流れ、電車が走り出す。
それでも、遠ざかる有紀の顔が涙でぬれていたから、寂しさと共に胸に宿る安堵にようやく俺の心は安らぎを得る。
いつか、迎えに行くよ。
遠回りした気持ちと、返し忘れたハンカチ。
それと、これからも積み重なる君への愛の言葉を抱えて。
その時には、ひらりと舞ってくれるだろう?
俺の大切な、美しい蝶。
【fin.】