大好きな君へ

屋上に行った。だけど誰もいない…。

――ここじゃない。

そして、思い浮かんだ場所。それはあたしが、君を好きになった場所…

きっといる。君はきっと…。あたしは、その場所に向かった。

【体育館】

ダンダンダン―

ボールが床を走る音。久々に聞いたその音の先には、………聖斗がいる。
体育館に入ると、ボールの音が止まった。

「……美夕夏?」

ほらね。聖斗がいるんだ、ここには。
あたしの名前を呼んでくれる聖斗が…
あたしを見ていてくれる聖斗が…
あたしの事を考えてくれる聖斗が…いたんだ。

あたしは涙が流れた。昨日聖斗は、あたしを抱きしめてくれた。もしかしたら、あれは同情とかかもしれない。だけど、1%の可能性があるならば…かけてもいいよね?

涙が流れている、あたしに気づいて、聖斗があたしのそばに近づいてくる音。
愛しくて愛しくて…

『聖斗じゃなきゃダメみたい』

あたしがそういうと、聖斗が近づいてくる音は消えた。

――ダメだよね…

聖斗を見た。だけど、聖斗は笑っていて…また近づいてきた。

「バカ!(笑)おせぇよ」

そう言ってあたしを、抱きしめてくれた。


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