り☆birth彼女♪
第18話
私は、生まれてすぐに死んだ


いわゆる医療ミスってやつだ


北条マイコって名前がついた瞬間に死んだ様なものだ


そんな私を、生命倫理委員会は拾ってくれた


今は私に訓練を施した上司と共にこの町のマンションに住んでいる


でも、上司との暮らしが長かったせいか、私はどちらかと言えば、おとなしくてもの静かで、気弱な性格に育ってしまった


この町にはだいぶ前から住んでいたけど、あまり友達っていう存在には恵まれなかった


まぁ…イジメに遭うなんて事は無かったけど


でも、中学に上がって劇的に変化したんだ



—中学に上がって間も無い事—


「あれ…?」


教科書が無い


次の授業の、社会の教科書が無い!


…どうしよう!家に忘れちゃった…!


別に、教科書なら隣の人に見せてもらえば良い


だけど社会の授業は違う


社会の教師は忘れ物に対して凄く厳しかった


授業中に後ろに立たされたりとか…まるで見せ物みたいな罰を受けてしまう


ちょっと時代錯誤な先生だった


中学に上がったばかりで隣のクラスに友達なんかいない…


いや、そもそも友達自体いなかった


そして…授業開始のチャイムが鳴る


…ダメだ…!


もう諦めるしか無い…


その時だった


隣の男子がそっと教科書を差し出してきた


「…?え!?」


「良いから…」


私達の席は教壇の真ん前…


いきなり先生に指摘を受ける


「すみません…僕が忘れました」


私をかばい、先生から言われもない罵倒を浴びて、最後には教室の後ろに立たされる彼


彼の名前は…


坂崎レンジ、だった


私は放課後、彼にひたすら謝った


「ごめんなさい…私のせいで…ごめんなさい!」


「いや、良いって♪あの先生はさ、腹いせに生徒を怒りたいだけなんだよきっと」


ニコニコと笑顔で私に笑顔で話してくれるレンジ君


それが逆に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった


「ごめん…なさい…グス…ふぐぅ…!」


「あ…泣かないで?ね!?もー済んだんだからさ!」


レンジ君は、私の涙を…優しい手つきでハンカチで拭いてくれる


優しい…こんなに…こんなに優しい男の子が…この世にいたなんて…!


私はその瞬間に、彼に恋をした…


自覚した


好きになってしまったと…


泣く私をあやすかの様に、色々な事をお話してくれた

そしと彼は


「あ、北条さんさ、部活入ってる?」


「え…いや…入ってない…けど…」


「じゃ!北条さんが良かったら朗読部どうかな!?」


部活の勧誘…


別に、部活の内容なんてどうでも良かった


彼と…レンジ君のそばにいるだけで…幸せ…


私の答えは1つだった…


それから、私は変わった


部活で揉まれ、励まされ…


まぁあの部長のおかげってのもあるけど


でも、レンジ君のおかげで変われた…!


彼を好きになって…劇的に変われたんだ


友達もたくさん出来て、冗談も言える様になった


私の人生は彼無しでは考えられない


私は毎日レンジ君の事を考えてる…





「カニクリームもらい!」


「ちょっと…カニクリームばっかり食べないでよ…僕だって好きなんだから」


「アンタがモタモタしてっかよ♪」


ナナちゃんとレンジ君がおかずの取り合いをしてる


「もー…あ、ナナちゃん…食べカス!」


レンジ君がナナちゃんのほっぺたから食べカスを取ってあげる


「サンクス♪」



良いな…幼馴染か…


「つーかアンタもついてんじゃん」


今度はナナちゃんがレンジ君の顔の食べカスを取る


……触るな




触るな…レンジ君に…!


触って良いのは私だけのはずだ!


…許さない…!


たとえ、幼馴染だとしても…許さない…



「マイコちゃん、ソース使う?」


レンジ君が私にソースを差し出す


「あ、うん!ありがと…!」


まぁ…私の個人的な感情も大事だけど、死神としてのポリシーも大切だ


もし、彼女が…テラーの死神なら、闘う事になる


しかも、あれだけのオーラの持ち主は強制執行部隊の可能性がある


ハンターか…


だけど私達委員会も対抗する組織がある


[ガーディアン]


生命の倫理を破壊する者から、魂を守るための組織


私はその組織の一員として訓練を受けてきた


…負けはしない!

「ご馳走様…!美味しかったわ」


私は彼の食事を美味しく頂いた


「あ…うん…じゃあコーヒーでも入れるよ」


「ううん…そろそろ私も帰らなきゃ…本当にありがとう!」


正直、もうこの場には居たくなかった


あんな…仲の良い場面、これ以上見たくない


私は彼らに再度礼を言い、帰宅する事にする


帰り際


「あ…あの…これからもよろしくね…!」


ナナちゃんが、私によろしくと言ってくる


……社交辞令かなんなのかはわからない


「うん!よろしくね♪機会があったら遊びましょ!」


私が遊びに誘うと嬉しいのか、ナナちゃんは笑顔になる


「うん!ありがとう!」


とびっきりの笑顔だな…


……いずれは闘う…その時が楽しみだわ…


その笑顔が…どう変わるのかしら?




< 18 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop