り☆birth彼女♪
第43話
文化祭も近々に差し迫った頃


既に季節は秋を迎えていた


文化祭の実行委員も設置され、会長でもある部長は多忙を極めていた


「はぁー…疲れたわぁ…」


部活も終了して皆帰り支度をしていると、部長が自分で肩をトントンと叩いていた


「お疲れ様でしたぁ〜」


皆が帰宅を始める


今日はマイコちゃんとの個別練習は無い


もちろん、僕もナナちゃんと帰ろうとすると


「あ、レンジ君は残って」


部長に声を掛けられる僕


「へ?何でですか?」


「ちょっと肩を揉んでくんない?」


「え…あ…はい…」


なんだろ…?僕はナナちゃんに話しかける


「ゴメンね、何か部長がさ…肩を揉んでくれって…」


「ん、分かった」


「すぐに帰るからさ」


「分かったってば!!しつこいな…!」


ナナちゃんはカバンを持つとサッサと帰ってしまった


…なんか、相変わらずナナちゃんの機嫌悪いんだよなぁ…


あんまり話してくれないし…




そして、僕は部長の肩を揉む


「あー…気持ち良いわ♪」


部長がウットリとした声を出す


「確かに、凝ってますね…」


「そーなのよ…巨乳だしねぇ♪」


部長は自分の胸を手の平に乗っけて揺らす


「また…やめて下さいよ…」


「ふふーん!君の同居人には無い魅力でしょ?」


「ナナちゃんに怒られますよ?」



すると、部長が振り向く






「……今、ナナを怒らせてるのは君でしょ?」





部室の中の時間が止まる


部長は振り向いたまま僕を突き刺す様に見つめる


「え?…あ…あの…」


「まぁ、ちょっと座りなさい」


部長は僕にイスを差し出す


「ま、別にかしこまんなくて良いわ」


「あ…はい…」


差し出されたイスに座る僕


「…今日あなたを残したのには2つ理由があるわ」


2つ…?


「まずはナナの事なんだけど」


「ナナちゃん?」


「最近、元気無いでしょ?」


「あ…はい…元気っていうか…なんか冷たいんですよ…必要最低限の言葉しか交わさないって感じで」


「そうね…私から見ても、君達はギクシャクしてると思うわ…かなりね」


「はぁ…」


やっぱり分かるんだな…部長…


「何でナナが冷たいか…心当たりある?」


「え…いや…」


「ふむ…」


部長は腕を組む


「君は鈍感ね」


「僕がですか?」


「うん、鈍感」


僕をバッサリと切り捨てる部長


「単刀直入に言うわ」


部長は鋭い目で僕を見つめる


「マイコとの個別練習、やめなさい」


「え…?」


個別の練習を咎められる僕


「ど…どうしてですか…?練習はいくらやっても問題無いって部長も…」


「そうね」


腕を組み直す部長


「でも、それは皆のプラスにならなければ意味は成さないわ」


「…どういう事ですか?」


「あなた達2人が、仲良く個別に練習すんのは構わないわ…お互い主人公って大役だしね…それもあっての事でしょう…でも、それを良く思ってないのよ?特にナナは」


ナナちゃんが…?


「いや…ナナちゃんが…そんな…」


「君ね君はナナちゃんの幼馴染でしょ?分かんないの?」


部長がやれやれとため息をつきながら呟く


「ナナはね、あなたを頼りにしてる部分が大いにあるわ」


「ナナちゃんが…ですか?」


「うん…だって、転校してきたナナにとってはあなたが1番頼りになるもの…そしてナナはあなたを頼りにするしか無いの…分かる?」


……そう…なのか?


「ナナは気分屋で奔放なところがたくさんあるわ…でも、それはあなたがそばにいてあげるからなのよ?」


「…はい…」


「そして、ナナにとって最も頼りになるあなたが自分をそっちのけで違うメンバーと練習にふけってたら寂しいわ?」


…つまり……


「そ、嫉妬してんの」


僕の顔色の変化で部長は察する


「いや…でも…嫉妬なんて…ナナちゃんが…」


「じゃなきゃ他に理由あんの?」


部長はまた腕を組み直し僕を見つめる


「…無いです」


「でしょ?だから、個別練習はやめなさい…分かった?」


「はい…」


「技術的にはレンジ君もマイコも問題無いわ…後はチームワークよ」


「そうですね…」


確かにそうだよな…


ナナちゃん…寂しかったのか…


「ナナの演技は素人ながら目を見張る物があるわ…これからメキメキ上達するはずだわ」


部長は僕に説き伏せる様に語る


「主人公の女の子のライバル役…ある意味では超重要な役なのよ?…ナナの演技を最大限に発揮させるのは仲間である私達の役目…分かるわよね?」


部長は僕を見つめる


「ナナをサポートしてあげて…ナナに寂しい思いをさせないで?」


「分かりました…」


「うむ!よろしい!」


部長は満足そうに笑顔になる


「そうね…君達は同居してんだから家で2人で練習したら?…ナナも喜ぶわよ?」


「…はい…!」


よし…帰ったら練習に誘ってみよう!


「んで!もう1つの話」


部長は立ち上がる


そして、部室の窓を開ける


秋の冷たい風が部室に入り込む


「何ですか?」


「ナナ、マイコ、ノブアキ君の事、頼んだわよ?」


「はい?」


そして、ひときわ冷たい風が部室に入り込む



部長はゆっくりと振り向く…




「君を、次期部長に任命します」


突然、突拍子もない言葉を放つ部長


ポニーテールの髪の毛がフワフワと揺らめく


「え…いや!そんな!いきなり…!」


さすがに焦ってしまう僕


「文句あんの?」


き、拒否権は無いのか…?


「いや…文句っていうか…だって…僕は…」


「そうね…君は男の子だしね…朗読部で男子の部長は過去に例は無いわ」


そう…元々女子が多い部活


そんな部を男の僕に引っ張れだなんて…


「君はそうね…優しいところが長所であり、短所だわ」


部長は何故か笑顔だ


「そして私に押されて、なし崩しでこの部に入る…押しに弱い、人に合わせて作り笑いをする、優柔不断」


「はは…良いところほとんど無いですね…」


「そ!だからよ?」


だから…?


何故だろうか?


「裏を返せば、人の意見も聞ける柔軟な対応が出来るの…あなたは」


「僕がですか?」


「うん、これはランとも一致した意見よ」


喜多見先輩も…


「ノブアキ君はあの通り遅刻魔でズボラ…とてもじゃないけど部長は無理だわ」


「…それは納得しちゃいますね」


部長は続ける



「マイコは……こう、腹に何か抱えるクセがあるわ」


マイコちゃんが?


「今回、個別練習を提案してきたのはマイコでしょ?別に告げ口とかそんなのは気にしないで?」


「あ…はい…マイコちゃんからです」


「そか…だからよ?」


だから?


「部長である私に相談も無しにやったのよ」


部長に相談してなかったのか…


「別に、私が部長だからって威張る気はサラサラ無いけど、仲間に相談もしないのはダメだわ」


「…そうですね…」


「仲間に相談出来ない人間には上に立つ役は厳しいわ」


「はぁ…」


確かに部長の言う事は最もだ


「もちろん、何でもかんでも口に出してもダメ…でもマイコは腹に隠し過ぎ…だからよ?」


「マイコちゃんが…」


マイコちゃんは腹黒いのかな?


あまり想像は出来ないけど…


部長が言うからには本当なのかな…


「ま、だから君を推薦するわけ!頼んだわよ!」


「わ…分かりました…まだ先ですけど…頑張ります…!」


「うん!良い返事ね…!んじゃ」


部長は握手を求めてくる


僕はそれに応えるべく、部長の手を握る


「あー後もー1つ!」


「え?まだあるんですか?」


2つって約束なのに


「で?ナナとはどこまでやったの?」


「は?」


「もう寝たの?」


また部長がとんでもない事を…


「ま…まだ付き合ってもないのにする訳無いじゃないですか!?」


「ふむ、まだという事はいずれは付き合うつもりね?」


「あ…」


「フヒヒ♪」


「き…汚ないですよ!誘導尋問じゃないですか!」


「君が勝手に、まだ、って言っただけでしょ〜」


「うぅ…」


言い返せない…


「まあ、それもあるんだから余計に
ナナには気を使いなさい?」


「は…はぁ…ていうか…部長は知ってたんですか?僕が…その…ナナちゃんが好きな事…」


「うん!四六時中ナナを見つめてれ…ばねぇ?」


そ…そんなに見つめてたかなぁ…?


「さ!帰りましょう!愛しのナナ姫が待ってんじゃないの?」


「あ…あの!」


「んあ?」


この際だ…聞いてみよう


「ナナちゃんは…僕の事どう思ってるか分かりますか?部長の独断で構わないです!」


これだけ鋭い部長だ…何か分かるはず…



「そこまで私は甘くないわよ?」


「え?」


「気になんなら自分で聞いてみなさいな?僕の事好き?って」


そんな…


「ふふん…女心は難しいわよ♪」


ダメもとで聞いてみたけど…



やっぱりダメか…













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