出会ったのは吸血鬼でした。
「……?(何、いまの音)」
辺りを見渡すけれど、音の原因は見つからない。
確かに何かが落ちた音を聞いたはずなのだが。
ふと、数メートル先にある細い路地に目が吸い寄せられる。
「あそこかな?」
何も考えずに路地に近づく。
気持ちがその音を確かめることだけに傾いて、心なしかヒールの音もはやくなった。
真夜中の冷たい空気が頬を撫でる。
酔っぱらいの人とかだったら、警察に連絡しよう。
どこかボヤけた思考のなかで、そんなことを考える。
「!」
路地をすこしだけ覗きこむと、そこには……。
「う、わあ」
────翼のはえた、男の人が倒れていました。