出会ったのは吸血鬼でした。



 これは夢、だろうか。
 むにっ、と頬を摘まむけど痛い。普通に痛い。



「だい、じょうぶですか……?」



 声をかけてみるけど、男の人は呻くだけ。
 うつ伏せに倒れているせいでその顔は見えない。

 髪の毛も服も黒く、全身黒尽くめ。

 その背中からはえた翼は真っ黒で、漆をぶちまけたように艶々と魅惑的な質感を視覚から訴えてくる。
 思わず撫でてみたくなったが、そんな場合ではない。

 翼がはえている部分の背中の服はどういう仕組みになっているんだろう。
 ……そんなこと考えている場合でもないか。



「大丈夫ですか?」

「……ぅ、う。……おま、え、俺のことが、みえ、るのか」 



 もう一度声をかけてみると、今度は呻きだけではなくちゃんとした返事が帰ってきた。
 ……質問の応答にはなっていなかったけれど。



「……(なに言ってるんだろう、この人)」

「、……っ」





 あ、気絶した。



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