出会ったのは吸血鬼でした。
さら、り
「────っ!!!」
「わ、サラサラでフワフワだ」
その黒くて艶々とした翼を見ていたら、どうにも触りたい気持ちを抑えることができなくなって、衝動に任せて触れてしまった。
触れられた方の彼は、酷く動揺しているようだけど。
そんなことは関係ないとばかりに、サラサラでフワフワの、そう、サラフワの翼に触れ続けた。
「お、ま……っ、」
「んー、触り心地いいですね、」
──貴方の翼。
そう言葉を続けながら、彼の顔を見ると、思った以上に至近距離に彼の顔があって、少し驚いた。
彼を最初に見たときから思っていたけれど、翼だけじゃなくて顔も端正で綺麗な顔立ちをしている。
彼は本当に、いったい何者なのだろうか。
「……い、おいっ」
「……はい」
どうやら思考に飲み込まれていたらしい。
私に声をかけた目の前の──この場合本当に“目の前”である──彼は、酷く焦ったように視線を左右に泳がせていた。
その顔は真っ赤に染まって、目は若干潤んでいる。
「ごめんなさい、考え事してました。」
「かっ、考え事してねぇで早く離れろよ!」
あら、怒鳴られてしまった。