棄てられないほど大切な者を
空っぽ
空っぽなのは世界
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【空っぽなのは世界】
私の名前は
坂下 真子(サカシタ マコ)
高校一年の14歳
自分の癖が異常だと気付いたのは
中学一年の春。
友人からのメールが
誰からだか分からず
『誰?』
と返信した日だ。
私には癖がある。
【削除癖】
スマートフォンのメモリーも
部屋にある物も
気が付くと、消えている。
無意識のうちに消しているらしい。
理由はわからない。
ただ、部屋の物や
携帯のアドレス帳の数が増えると
不思議なほどイライラするんだ。
『ラインがあって本当に良かったよー。』
『?』
『ラインならメッセージ送れば
名前が出るからね。
私からだってわかるでしょ?』
そう言って笑うのは中学からの友人
宮本 香織(ミヤモト カオリ)だ。
今日は高校に入学してから
初めての日曜日。
お互いの家のちょうど真ん中にある
行きつけのファミレスでだべっている。
『気が会いそうな子、いた?』
『さあ。わからない。』
セオリー通りに話題は互いの高校の事で
香織のクラスには
特にイケメンはいないらしい。
『真子は人見知りするからなぁ。
すごい心配。』
『別に大丈夫だろ。』
特に問題はないよ。と軽く笑う。
『話しかけられたら、
なあに?って笑顔で答えるんだよ。』
本当に心配そうな顔で
レクチャーしてくる香織に
『話しかけられた事無いから大丈夫。』
と答えたら、
『嘘でしょ。』
って真顔で言われた。
うるさいよ。馬鹿。