棄てられないほど大切な者を
.


『じゃあ次、坂下君 答えて。』


数学の時間


先生に指されたから前に出ると

きょとんとした顔をされた。



『あれ?女子だったのか。
ごめん。ごめん。』



これで三度目。


なぜか私は先生達から

男子生徒だと間違われる。




別に両性に通用しそうな

名前でもないと思うのだが。


"子"付いてくし。




それでも、大したことではないから

気にせずに答えを黒板に書くと


『よし。あってる。』


と言われたので

席に戻った。



『おんなじ名字の奴がいると大変だな。』


ノートに次の問題を写し解き始める。


『3、4回目だよね。
間違われるの。』


特に難しい問題でも無いから

特に困ることなく解けた。


『おーい。坂下さーん?』

『?』


名前を呼ばれて横を向くと

苦笑いを浮かべた男子生徒と目があった。


今朝の遅刻君だ。


『なに?』

『名前、良く男と間違われてんじゃん。』

『うん。』


だから何だと言うんだろうか。


軽く首を傾げて先を促すと


『一年にさ、もう1人坂下いるじゃん。』

『そうなんだ。』

『知らんの?』



遅刻君が言うには


一年に坂下が私の他にもいて

そいつの知名度が高いらしい。



『入学式でさ、スピーチしてた奴だよ。

あれって入学試験で
一位だった奴がやるんだって。

先生達の中じゃ"坂下"って言ったら
あの主席君が浮かぶんじゃね?』


なるほど。


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