君と僕の半年間
放課後。

僕は部活には入っておらず、教室で自習をしていた。


「えーっと……」


机の前で僕に声をかけたのは、高坂愛唯。
これが初めて会話した時。


「僕は、柊冬眞(ひいらぎとうま)。よろしくね、高坂さん」


「あっ、うん」


転校生が初日で放課後まで1人というのはどこかおかしい。


「どうかしたの?」


「友達はみんな部活で……」


下を向いて呟くように言う君。
この学校で部活に入っていない生徒は珍しい。


「高坂さんは何か入らないの?」


「…うん。ちょっと、ね」


「そうか」


自分で話しかけたのに、君は全く喋ろうとしなかったよね。
もっと話したいと思いながらも、心の何処かで何なんだろって思っていた。


「ちょっと待ってて」


残り二問をさっと解いて、鞄の中に入れてあるチョコレートを一つ、君に渡す。


「あげる。疲れたでしょ?」


「ありがとう」


そう言って嬉しそうに受け取ってくれた。
僕だけに見せた最初の笑顔。


「僕、今から帰るけどどうする?部活終わるまで時間あるし…。帰るなら暗いし、送るよ?」


時刻は5時過ぎ。
外は薄暗くて、帰っていればすぐ暗くなる。


「…私も帰ろうかな」


多分、友達に待ってるとでも言ってしまったのだろう。


「部活入ってない人はそろそろ帰らないと怒られるし、ね?」


今思い出すと、本当おかしいと思う。
初めて会った、全く関わってない女の子に一緒に帰ろうなんて普通言わない。
ナンパでもしているように見える。


「うん。ありがとう」


そう言って見せた君の笑顔はまだ僕の頭の中で鮮明に記憶されているよ。




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