君と僕の半年間
「学校どうだったかな」


「楽しかったよ」


これから生活していく学校。
楽しい、と聞けただけでよかった。


「何かあったらいつでも言ってね」


「うん。ありがとう」


話すことが見つからなくて、やっぱり黙ってしまう。
こういう時って男の僕が出すものじゃない?
なのに、何も言い出せないなんて…


「柊くん、小さい頃のこと覚えてる?」


「小さい時?」


「あ、いや…何でもないや」


「覚えてるよ」


小さい頃のこと。
僕の中で一つの思い出が浮かぶ。


「そっか…向こうも覚えていたらいいなぁ」


遠い目をして君は呟いて…
何だか悲しそうに見えた。


「ごめんね。突然、こんな話しちゃって」


「大丈夫だよ。高坂さんは何か好きなものある?」


「好きなもの…?」


何も話題がない時は好きなものの話をするのが一番続く、よね?
僕にわかるものならいいんだけど…
わからなかったら話すことはできない。
一方的に聞くしか……


「食べ物でいいのかな」


「全然いいよ」


むしろ、アニメとか音楽より食べ物とかのがわかる。
でも、好きなものっていわれて音楽とかが浮かばないって……
今は気にしても仕方ないか。


「スイーツとか好きかなぁ。前はね、近所にクレープ屋さんがあって、よく食べてたの」


「クレープなら少し歩けば美味しいところあるよ」


僕がそう言うと、君は嬉しそうに笑顔を向ける。


「今度案内して!いや、明日の放課後!!あ…無理、かな?」


「明日の放課後に行ってみようか」


「やった!ありがと!嬉しいっ」


今日一番の笑顔を僕だけに向ける。

可愛いなぁ…

なんて、思ってるのは君にはまだ内緒。

その後も、スイーツの話題で盛り上がって彼女は嬉しそうに帰った。


「今日はありがとう。柊くん、また明日ね」


「また明日」


軽く手を振って、僕は家へと帰る。

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