君をください
.


『あ、の。』

『ぇ?』



人など来るわけが無いと

鷹をくくって


芝生に寝転がっていた私。




後方の上部から

聞こえてきた急な声に


思わず勢いよく起き上がった。





真っ暗な空の下

離れた場所にある街灯は意味も無く


遥か上にある
優しい月明かりだけを頼りに


その男性を観察する。





まだ肌寒い5月の夜。

男性は暗い色の薄手のコートを着ていた。



恐らく180㎝を超す身長

すらりとした肢体

黒ぶちの眼鏡に

ユルいパーマのかかった

耳を半分おおう程度の黒髪




俗に言う

イケメン



じーっと見つめていたら

男性は困ったように苦笑いをして

言った


『っと…、こ、こんばんは』


『こんばんは。』






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