君をください
.


『失礼します。
秋山先生に用があって来ました。』


英語科の職員室に入って
そう言うと

秋山先生は焦った様子で扉に走りより



『じゃあ、外で話そうか。』


そう一言 言って
隣の空き教室へと入っていった。



おとなしく教室に入り

しっかりと扉を閉める。



『座っても良いですか?』


私達二人しかいない教室で

あたふたしている秋山先生に訪ねると


『あ、どうぞ。座ってください。』



そう返ってきたので

遠慮無く窓際の席に座った。



扉に近いと
外に声が漏れる可能性があるからだ。





『ごめんね。未提出の課題なんて
嘘の理由で呼び出して…。』


眉毛を八の字にして謝る姿に

少し可哀想な気がしてくる。



『大丈夫ですよ。

それに、この前の告白のことで

なんて言われた方が困りますよ。』



場を和ませようと

軽く笑ってそう言うと



『ですよね。すみません。』


フォローもむなしく

尚更落ち込んでしまった。




これ以上
私にどうしろと言うんだろう。



とりあえず次の言葉を待っていると

しばらくして
ようやく秋山先生は顔をあげた。




2週間前と同じように

まっすぐ私を見つめて口を開く




『この前は本当にごめん。
急に意味の分からないことを言って。


あの時のことは…忘れて欲しい。』



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