君をください
そんなの知らない!
.


【そんなの知らない!】



あれから1ヶ月と数日


先生は、普通に先生をやっている。



嘘の理由で
呼び出されることもないし


私から質問しに行く

なんてことも、勿論ない。




私と先生は、まったく普通の

生徒と先生の関係だ。



お気に入りの場所にも

いっさい近づいていない。







『ねー、顔は良いんだけど…』

『冗談とかいっさい言わないよね。』




ある日の昼休み。


美里とご飯を食べていたら


教室の他の女の子グループから

秋山先生の話が聞こえてきた。



『空乃(ソラノ)ー?』



きゃっきゃと話すその声に

無意識に箸が止まる。



『空乃ーーー。』

『え?なに?』


『今、フリーズしてたよ。』



少し拗ねたように

頬を膨らませる美里。


『ごめんごめん。
ちょっと向こうの話が気になってね。』


軽く笑って謝ると

美里もすぐに笑顔に戻る。



『秋山先生の話でしょ?

人気あるんだけどねぇ。

硬いって言うか
面白みがないって言うか 』


顔は良いのにね。
と苦笑いを浮かべる美里に

私もこくりと頷いた。



先生の授業は

すごくたんたんとしている。


ジョークもないし

間違えたり、ミスをすることもない。



なんて言うか、笑いがない。




『空乃はー?』

『ん?』

『秋山先生、好き?』


美里の言い方は
当然、先生として好き?

って意味。わかってるけど

頭にあの言葉が浮かんだ。


"好きじゃないです"


『……好きじゃない。』

『私もー。苦手だなぁ。
もっと笑えば良いのにね。』



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