雨の日の神様
でも、その言葉が出てくる前に、彼は傘を開いて私の手に握らせた。

一瞬、手が触れた。

「女性を濡れたまま家に帰すなんて、男として面目が立ちません。私のことはいいから、早く家に帰りなさい」

そんなジェントルマンな台詞を言って、彼は上り坂を下って行った。


私はぽけーっとして彼を見つめていたが、不意に名前だけでも訊いておこうと思った。


「あ、あの!」

呼びかけると、彼の朱色の2つの目がこっちを向いた。

「名前だけでも、教えてください……!」

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