雨の日の神様
「和弥」

「……え?」

「鷹取 和弥です。以後、宜しくお願いしますね」


また静かな微笑みを残すと、すっと彼はいなくなってしまった。

後には、彼の傘を持った私だけが残る。


「和弥、さんかぁ……」

試しに口に出して言ってみる。

大丈夫、こんなに雨が降っているんだから誰にも聞こえてはいないはず。

きっと、紫陽花しか聞いていない。


「かっこよかったなぁ――」


と、ぽつりと唇から言葉が零れ出た。

……って、何言ってんの私!?


< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop