貴方に魅せられて
…もうされるがままにしよう…
そう思った。
抵抗するだけ無駄なのはわかっている。

「私ね娘が欲しかったの。
でもね、病気で産めない身体に
なっちゃって諦めたの。
だから今日すごく嬉しいわ。」

嘘ひとつない素直な笑顔だった。

…そうだったんだ…
2人には子供がいないんだ…
だからこうして見ず知らずの私を
優しく迎えてくれたんだ…

この2年間の2人の暖かい行為に
納得できた。
今日は娘になろう。そう思った。



次に連れて来られたのは美容室だった。

奥の個室に通され
由香里さんと離れ離れにされた。

「あとでねー。」

由香里さんはニコニコして
別室へと消えて行った。
さっきの話を聞いて
素直に甘えようと思った私は
すごく気が楽になって
椅子に座れた。

鏡に映る自分は
スッキリした顔をしている。

「随分髪ほったらかしてるでしょ?
毛先痛んでるわよ。」

その口調を聞いて
鏡ごしに美容師さんを見た。
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