貴方に魅せられて
由香里さんに笑いかけられたが
わたしはその言葉でますます
ドキドキした。

え!?もうすぐ帰ってくる!?
あの森山邸で一緒に暮らすの!?
一人暮らししないの!?
毎日この人と…

「麻衣ちゃん大丈夫?
顔が赤いけど…」

由香里さんが心配そうに
わたしを覗き込むと

「だ…だだだ大丈夫です。」

その一言が精一杯だった。

たくさんの美しい料理が出てきたが
ほとんど味を覚えていない。
最初の夜景への感動なんて
もう忘れてしまった。

「じゃあ翔ちゃん
来月楽しみに待ってるわ。」

私はいつの間にかホテルのロビーで
翔平さんと別れの挨拶をしている
由香里さんを見ていた。

ずっと上の空で
何を話したかも覚えていない。
というか
翔平さんとはほとんど会話はなかった。…と思う。
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