貴方に魅せられて
お母さんは私の誕生日
必ずオムライスを作ってくれた。
それが何よりのご馳走だった。

作り方…
教えてもらっておけばよかったな…
そう思った瞬間…

最近は両親の死を思っても
泣かなくなっていたはずの私の目から
一粒涙が落ちた。

それに驚いた翔平さんが

「おい!どうしたんだよ!?
そんなにシェフの料理に
飽きてたのか!?」

なんて贅沢なことを聞いてきた。

そんなわけないじゃん…
そんな贅沢な悩みなわけないじゃん…
お坊ちゃんにはわからないよ…

そう言いたかったけど

「だ…大丈夫…。」

それだけ言って
ナフキンで顔を隠し
ポロポロ泣いた。

翔平さんはそれ以上何も言わず
ただ黙って
私が泣き止むのを
待ってくれていた。

悲劇のヒロインちゃん
きっとそう思われてるんだろうな…
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