君が髪を切った理由
「真寿くんが好きなんだ」
あのときの声が
今でも耳に残ってる。
蝉の声と重なって、震わす唇がとても色っぽかった。
流れる汗に手の甲をなぞらせて照れ笑いする横顔。
そんな亜紀に、気付けば僕は心魅かれていた。
真寿はイケてる。
男から見てもそうなんだから、女の亜紀が好きになるのも仕方ないんだ。
気取らない外見や素っ気ない態度が、真寿の魅力を引き立ててる。
「何じろじろ見てんだって。気持ち悪いぞ、ハル」
「亜紀とはどうなの?」
「えっ、なんだよ急に」
「付き合ってみてどうだって聞いてるんだ」
本当は二人の仲良し話なんてちっとも聞きたくないけど、聞いてみて欲しいとせがむ変な彼女がいるから。
「別に、普通。それより面白いゲーム見つけたんだけどさ」
そう言いながら教室の隅で携帯のコンセントを差し込む姿が、いかにも女に興味はないって雰囲気をだしてて。
こういう所がまた素敵とか、女は思うんだろうな。
僕はいつもうれしそうに彼女に付いて行くばかりで、全然素敵じゃなくて。
真寿には絶対勝てない。
わかってて僕は
彼女の相談にのっている。