君が髪を切った理由
「ハル、
放課後買い物付き合ってよ」
掃除の時間の静かな耳打ち。
そんなことにドキドキして、満足してる僕がいる。
情けないけど、彼女の瞳に僕だけが映る一瞬一時が、貴重で、大切で。
せめてその瞬間だけは、誰にも渡したくなくて……。
今日も僕は
君のわがままに寄り添うんだ。
真寿が友達じゃなかったら、奪う勇気があっただろうか。
真寿というきっかけがなくても、亜紀に自分から近付けただろうか。
僕の中の可能性を自分でも信じられなくて、落ち込んでしまう時がある。
そんな時、
決まって彼女は隣りにいた。
「ハルがいてくれて良かった」
現時点では最高の褒め言葉だろう。
君がもし僕のものだったなら。
そんな無駄な空想を無理に消そうとしてるのに、どんどん君は僕の中に入って来るんだ。