やっぱり、無理。
まあ、本当はあんま乗り気じゃなかった。
ガキの勉強をみるなんて面倒だし。
男ならまだしも。
女子高生となんて、何話せばいいかわかんねぇし。
もともとガキには興味がねぇ。
今まで付き合いや関係のあった女だって、色気のある大人の女ばっかだったし。
まあ、ションベンくせぇ女は勘弁、ってとこあったし。
しかも、大俳優の1人娘とくれば、俺の苦手なお嬢様系のタイプだろうし。
だけど、薫さんのたっての頼みで。
まあ、薫さんの方の事情も色々聞いていて、娘に対して滅茶苦茶弱いっていうのもわかっていたし。
少しでもいい親父だと見せたいんだろうと察して・・・家庭教師を引き受ける事にしたんだけど。
で、意外な。
この、状況・・・。
はあ。
俺は、首をすくめると。
「薫さん、今、帰れって俺拒否られたけど?」
そう報告した。
薫さんはため息をつくと、困った顔をした。
その様子で、このガキがちょくちょくこういう生意気な態度をしているんだと悟った。
マセてやがるのは外見だけで。
中身は、甘やかされっぱなしのクソガキだと、思った。
だけど。
困った顔をした薫さんの表情を見たまりあは、仕方が無い、という表情で俺に頭を下げた。
「初めまして。北島まりあです。薫さんが、NYではお世話になりました。昨年のブロードウェイでの舞台も、お陰様で評判が良くて。ありがとうございました。」
驚いた。
きちんとすれば、そつなく挨拶ができるんじゃねぇか。
だったら、さっきのはなんだったんだよ、と突っ込みたくなったが。
すぐに、突っ込まなくてよかったと思う事になった。