やっぱり、無理。



ざっと、シャワーで汗を流し、寝室兼書斎へもどると。



ベッドから上半身を起き上がらせたまりあが、物憂げに俺を見た。



むき出しの肩が艶めかしい。





「目ぇ、覚めたか?」






結局あの後、研究室に戻ることは戻ったが、来週までの課題を適当に出してゼミを終えた。


その適当さに、まりあが呆れた顔をしたが。


俺のゼミはこんなもんだ。


特に、この教材を読んで訳せ、なんてことは言わない。


ゼミ1年目の者は、ひとつ題材を選び、1年かけてそれを訳す、と言うやり方だ。


だけど、ただ訳せば良いっつうもんじゃなく。


基本、直訳、説明文的な表現は受け付けない。


題材を読みこんで、自分の言葉に直して訳す。


訳した文章も、なめらかでなくてはならない。


表現にも、オリジナリティを求める。


これが結構難しい。


まあ、これをやり切るとグンと、英語力がアップするしな。


まりあは、15んときにもうそれをやり遂げたから、他のやつらとは比べ物にならねぇくらい先に進んでいる。


大学入学時には、すでに院生並みの実力はつけていた。


それに、何と言ってもセンスがいい。


翻訳においても、センスは重要で――




なんて事を考えていたら。


性懲りもなく、工藤昌や和田優也がまりあに絡んでいるのが目に入り、ムカついて。


有無を言わせず再びまりあを担ぎ上げ、自宅へ連れ帰った。



そこからは速攻で、ベッドに引きずり込んで。


まりあが気を失うまで、俺から離れられないことを体に教え込んだ。



大体、俺と別れるって考えること自体、許せなかった。





別れられるなんて、思うな。









「ジロー、のど乾いた。」




まりあがいつもよりぶっきらぼうに、かすれた声でそういった。


俺はその声をきいてさっきのまりあの乱れようを思い出し、喉の奥でクッ、と笑うとテーブルの上に置いておいたペットボトルのふたを緩め、まりあに渡した。




「いい声で、啼いたもんな?そら、喉も乾くよなぁ・・・ククッ・・・。」




そう言うと、枕が飛んできた。


ニヤリと嗤いながら軽くキャッチすると、まりあが悔しそうな顔をする。


その顔でさえ、俺をそそる表情で。




たまらなくなって、唇を押し付けた。






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