やっぱり、無理。



ハンバーガーショップへ着くと。


俺に気が付いて、慌てて立ち上がるまりあの手を、一緒にいた男が掴んだ。


その状況に頭が付いていかなくて、俺は目を見開いた。




「誰だっ?この男はっ!?」




俺の声に、ビクリとしながらも、まりあが答える前に男が口を開いた。




「同じクラスの、工藤昌。まりあの彼氏候補だけど。」


「ああっ!?ふざけたこと言うなっ!!」


「昌、その話は、断ったでしょ。」




まりあが、慌てて男にそういったが。


俺は頭に、血が上って。





「お前、浮気なんてゆるさねぇからなっ!!来いっ!!」





そういって、まりあの手を握る男の手を引きはがし、男を突き飛ばして。


まりあを担ぎ上げた。



もうその後は、まりあを車にほり込むと猛スピードで車を走らせた。





マンションに着いて。



担いだままのまりあをベッドに投げると。


その上にのしかかった。





「お前・・・何なんだよっっ、あの男はっ!?」





自分でも、声が震えているのが分かった。


信じられないことに、感情のコントロールが上手くできない。


頭の中でさっきの男がまりあを抱く妄想が駆け巡り、どす黒い感情で心が覆われていく。


頭に血液が集中したように、ドクドクと血管が波打つ。


胃も焼け付くように痛い。


だけど、まりあは。


今考えると、やましいことがひとつもなかったからだろうが。


俺の目を冷静に、正面から・・・あのそそる目で見つめて。




「・・・だから、言ったでしょう?クラスメイトの、工藤昌。」




冷めた声を出した。


その温度に、俺は焦って。





「あいつと、浮気かぁっ!?」





その時頭の中の全てをを占めて、俺を苦しめていると言っていいほどの疑惑を口にした。


だけど。





「意味が、分からない。」





まりあが、氷のような声でそう答えた。


まりあの声の冷たさと反比例したように、俺は激昂した。





「ああっ!?何がだっ!?そのまんまだろっ!?俺がいるのにっ、あの男と付き合うのかっ!?そんなこと、絶対に許さねぇぞっ!!」





そう怒鳴ると、まりあは、ポカン、とした顔をして。





「何で、恋人でもないセフレのジローにそこまで束縛されるの?」





と、ありえないことを言ってきた。







< 29 / 66 >

この作品をシェア

pagetop