やっぱり、無理。
「何の用?」
ドキドキで尋常じゃないほど、波打つ心臓を気取られないように。
素っ気なさと冷たい声で、問うた。
私のその言葉と温度に、ジローが眉をしかめる。
「ゼミ、サボるのか?」
「担当准教授と、今日は顔をあわせたくないので。」
「そんな、理由は、却下。」
なんで、ゼミをサボる事を許可しないという意思を伝えるだけなのに、耳元に口を寄せてそんなゾクリとする声をだすかな。
「てゆうか、顔も見たくない。」
「あぁ?」
ジローの声でゾクリとした事を気取らせないよう冷たい言葉を吐いたが、そんなことはお見通しだったようで。
ジローはニヤリと嗤うと、掴んでいる方の親指で私の腕の内側を意味深にソロリと撫でた。
「・・・っっ・・・山岸准教授、セクハラになりますよ?」
そう言い捨てて、動揺を悟られないように腕を振り払おうとしたが。
ジローが馬鹿力のせいで、振り払えない。
「あ?自分の女に何したっていいだろ?」
開きなおりやがった。
「よくない。もう、私達別れたんだし。」
私の言葉に、ジローが片眉を上げた。
「へぇぇぇ、そら、初耳だなぁ。」
「はっ!?昨日、私、言ったよねっ!!」
すっとぼけるジローを私は睨みつけた。
だけど、ジローはものともせず。
「だけど、俺は別れるのを承知してないぞ?」
「・・・何いってんの?浮気した時点でアウトでしょ?」
昨日のキスシーンを思い出して、目が熱くなり。
咄嗟に目に力を入れて、ジローを睨んだ。
何故か、ジローがそんな私を見て、ニヤリと嗤った。
「まったく、お前はよぉ――」
何か言いかけてジローは、そのまま私をグイと引き寄せると。
「・・・・っ!?」
いきなり私の唇を奪った。
な、何をッ!!
唇が離れた途端、文句を言ってやろうと思い、ジローに向き直った。
「何なのっ!?一体!!」
こっちは、怒っているのに。
なのに。
そんな私の言葉に、ジローの口角が上がった。