やっぱり、無理。
その視線にゾクリとした私は。
「ま、まりあー、やっと追い付いたっー。」
荒い息の昌のそんな声で、ホッとした。
でも、すぐに。
ジローが掴んでいる腕に力を入れて。
睨むように、凄んできた。
「お前、何でさっきから男に告られまくってんだよ。大体なぁ、そういう服は着るなっていったよな?何で、足見せてんだよ、何で、んなシャツ胸開けてんだよ。グロスも禁止っていってたよなっ。お前わざとだろっ、わざとフェロモンだしまくってんだろっ!・・・・おいお前らっ、俺の女に手ぇ出したら、どうなるかわかってんだろうなッ!?」
束縛の強いジローと別れたんだからと、自由な服装をしていたから、ブチ切れられたというところか。
もう、私達別れたはずじゃない。
挙句の果てにジローは、昌や追いかけてきた男子達に威嚇をし始めた。
もう、本当に勘弁してほしい!
キレてるってことだろうけど・・・。
「ああっ!?」
ほら、ジローが昌の胸倉をつかんで、滅茶苦茶メンチを切り威嚇しだした。
来月確か、34歳になるいい大人だよね。
しかも、それは。
教育者にはあるまじき態度だと思うんだけど。
いや、人としてもどうかと・・・。
ビビる、昌。
まぁ・・・過去の事を根に持っているジローはここぞとばかりに、昌を追い込む気満々って感じで。
でも、昌もビビリのクセに頑固だから、引かないだろうし・・・。
これは、まずい、と思って止めに入ろうとした。
・・・のだけれど。
「北島さんっ、みつけたっ。」
「まりあちゃん、とりあえずさ~」
「北島、今晩飲みにいってから、考えてよっ。」
「まりあっ、今日合コンセットしたしー。」
「まりあ、好きだーーーー。」
「北島さん、俺と付き合って?」
さっき断ったはずの顔見知りの男子達に、一瞬のうちに取り囲まれた。
えーと。
「・・・・・。」
う。
チラリと見ると、案の定。
ジローの顔が、般若になっていた。
そしてさっき断ったにもかかわらず俺と付き合ってと再び言った和田君につかみかかり・・・・。
和田君につかみかかるジローを止めようと思ったのだけれど。
突然。
「ほらっ。北島さんは山岸先生がいなくても、男子ちやほやされて喜んでいるんですからっ。山岸先生は騙されているんですよっ。」
と、場違いな、言っている意味とは正反対の甘ったるい声が聞こえてきたので、私はそちらを見た。
って、やっぱり。
経済学部の、東野さん。
今日もツケマでしっかりプリンセス顔。
その迫力まつ毛で、私を睨んでいらっしゃる。
だけど。
私、男に囲まれて喜んでなんかないし。
まして、ジローにつきまとってなんかいない。