パステルデイズ
「えっ…?」


戸惑う私に対し少年は表情を変えず淡々としている。


「嫌なら別にいいんだけどさ。」

そう言うと立ち去ろうとする少年。
咄嗟に私はなぜかわからないけど少年を呼び止めた。



「食う‼︎」


思った以上に大声だった。
少年も少し驚いたようだ。



フッと笑うと少年はコンビニの袋をガサガサと鳴らしながら私のほうに向かってきた。


「どれがいい?」


そう聞かれたので私も少年のほうへと近づく。


中を見ればチョコやらバニラやらストロベリーやら様々の種類のアイスが入っていた。


「なんでこんなにアイス持ってんの?」

「買ったから。」


だろうな。と心の中でつっこんで私はチョコミントを選んだ。


「これにするわ。ありがとう。」

「げぇっ。よりによってチョコミント選ぶなんて変わってるな。歯磨き粉じゃん。こんなん。」

あからさまにバカにされたので少しムッとする。

「そんなことないわよ。こんな美味しい歯磨き粉ないっつーの‼︎」


自分から聞いたくせにふーんと大して興味なさそうに少年は答えた。


「はい。これスプーン。」


「あ、ありがとう。これいくらだった?」


「120円。」


「払うわ。ちょっと待ってて。」


そう言って立ち上がると少年は眉を寄せる。


「どこ行くの?」


「家よ。財布いま持ってないの。」


「じゃあいいよ。ここで君を待つほうがめんどくさい。」

そう言うとどかっと草むらに腰を下ろす。


「食わないの?溶けるよ。アイスなんだからさ。」
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