パステルデイズ
「遅っせぇー。」
河原に着くと、すでに彼はアイスを食べていた。
「なに先に食べてんのよ。」
「アイス放置してたら溶けるだろ。」
「昨日私は待っててやったのに。この薄情者め。」
そういうと彼は薄く笑う。
「知らないなぁ。俺は過去は振り返らない主義なんだ。」
「少しは見ろよ。」
言いながら私も笑う。
隣に座ると、彼が無言でアイスを差し出してくれた。
それは、初めて会ったときにバカにしてきたチョコミント味。
「ありがと。」
受け取ると早速私も食べ始める。
すると彼は、こっちをじっと見てきた。
「やっぱり俺には、これの良さはわからないな。歯磨き粉を好んで食べようと思う、思考回路が謎。」
何事かと思えば、相変わらずバカにしてきて。
「チョコミントの良さがわからないなんて、まだまだお子様ね。」
そう言って鼻で笑ってやる。
「なにがいいんだよ、それの。普通にチョコのが美味いじゃん。」
「わかってないなぁ。もちろん、ただのチョコも美味しいけど、ミントが加わることで爽やかさっていうの?それがプラスされるわけよ。」
せっかく教えてやったのに、ふーんと興味なさげな様子。
このヤロ、自分から聞いてきたくせに。
そう思いながらも、次の一口を食べようと口元に持っていこうとしたとき、
「じゃあ一口。」
スプーンを持つ私の手を掴んで、奴はそのまま、自分の口元にアイスを運んでいった。