パステルデイズ
また無言になった空間。
耳に響くセミの鳴き声とかすかな川のせせらぎ。
「…わかってた。その気持ち。私も同情と見せかけた善意の押し付けが死ぬほど嫌い。」
膝を抱え顔をうずめて言う。
「今それやろうとしてたわ。ごめん。」
「だから謝んなって。」
少し間をおいて彼が言う。
「別に俺は可哀想なんかじゃないよ。
姉ちゃんと過ごした時間は俺にとって幸せな時間だったから。」
チラリと横目で彼を見る。
「それに言ったろ。俺は過去は振り返らない主義なんだ。」
そう言うとニッと笑ってみせる。
「強いね。初めて見直したかも。」
「もっと今までにもいいとこはあったけどな。」
いつも通りの軽口。
…私はどうだろう。
”当たり前のようにこの家にいれると思うんじゃないよ‼︎”
”文句があるなら出て行きな‼︎
アンタなんていなくていいから‼︎”
「…私は過去に囚われてしかないなぁ。」
言葉が自然と口から出ていた。
「アンタには悪いんだけど私は家族のこと常に死ねばいいと思ってる。」
あぁダメだ。これ以上言ったら引かれる。
「私には家族なんていらない。向こうだって私のことはもうとっくに捨ててる。」
わかってるのに止まらない。
「何回殺してやろうと思ったかもわかんないし生まれてきたことも後悔したし。」
今までもこれからもこんな本音言うつもりなんかないのに。
こんなの聞かされても迷惑なだけなのに。
どうして止まらないの?