パステルデイズ
「私にとって家族なんていても迷惑なだけだし必要もない。向こうだってそう思ってるの。」
彼は黙って私の話を聞いていた。
「だって私ここに捨てられたんだもん。」
あぁ全部言っちゃった。
…引いたかな?
…引くよね。
自分はお姉さん亡くしたばっかなのに
家族なんていらない死ねだの言われていい気分なわけがない。
「まーあれよ反抗期ってやつ?捨てられたってのは大げさかな!ちょっと喧嘩しちゃって家出?的な?せっかく夏休みだしおばあちゃん家でも行くかーって!」
慌てて取り繕ったように笑ってみせるけど彼は笑わない。
ただじっとこっちを見てる。
…嫌われた?
…なんで言っちゃったんだろ調子乗って。
なんかコイツのお姉さんへの話聞いてたら我慢できなくて。
聞いて欲しくて。
私のことわかってほしくて。
コイツならもしかしてわかっくれるかもって…!
「初めて会った時から思ってたんだけどさ。」
唐突に話し始める彼。
「ん?なになに?」
明るい調子のまま返す。
「お前、誤魔化すの下手くそ。」
そう言って鼻で笑ってくる。
「…は?」
「誤魔化そうとすると変にテンション上げようとするし語尾も無駄に伸びる。」
作り笑顔が消える。
「まーわからんでもないけど。俺も得意だよそういう自分偽るかんじ?」
「…そんな態度なのにこれでも偽ってんの?」
「まあね。基本他人の前では本心とか出さないから。」
でも、と続ける。
「お前の前は結構素だよ。」
そう言うと彼は私に近づく。
そしてポンと私の頭に手を置いた。
「だからさお前もやめれば?気持ち悪いんだよ。変にテンション高いお前。」
口のほうは相変わらず乱暴なままだったけど撫でてくれる手からはぶっきらぼうな優しさが伝わってきた。