パステルデイズ
「アンタが、愛想良く笑ってるとこなんて想像すらできないんだけど?」
「悪いけど、俺は基本的に愛想のいい好青年だよ。」
「この国に言論の自由が認められててよかったわね〜。なに言うのも、自由は自由だもんね〜。」
「おい。どういう意味だよ。」
「そのままの意味だよ。」
いつも通り中身のない会話を続ける。
会話って中身のないやつが、1番楽だし楽しいものだと思ってる。
核心に迫った話とか、自分の本心みたいなものを語るより、ずっと盛り上がるし人間関係も円滑に回る。
適当に言葉を繋ぎ、ギャグにしたりいじったりいじられたり、時には自虐ネタってのも使える。
今までの経験から言って、中身のない会話をしていれば、まず嫌われたりすることはないのだ。
要は、人を傷つけたり、自分が傷ついたりする要素を創り出さなければいい。
だから相手から話してこない限りは、話の核心をつっこむことはせず、当たり障りのない会話をしてきた。
自分の本心を相手に伝えて、望むような答えが返ってこなかったり、心動かされるような内容ではなかったとき、人はそれを不満に思い、悪口や嫌悪感に繋がったりする。
自分の本心が、相手の望んだ答えとは限らない。
それを避けるには、中身のないバカ話をできるだけ続けることが大切。
これが、人に嫌われず人気者の私を維持するコツのひとつだ。
これを長年実行している私は、自分から相手のことを深く尋ねようとはしない。
だからほんとに珍しい。
「じゃあなんでアンタは普段は好青年の自分をつくってるの?」
相手の中身について、自分から質問するのは。